天皇陛下の御譲位と憲法改正
天皇陛下のお気持ちが公表され、暗に譲位に対する期待を滲ませる内容が明らかとなりました。
その解釈の中で、「摂政を置くという手もあると表明された!」と喜んでいる右翼もいますが、どう読んでも、天皇陛下のお気持ちの中では、摂政を置くことには好意的では無いようでした。
天皇陛下は憲法の〝象徴天皇〟について非常に重視なさっていて、摂政を置いても、象徴としての天皇がその職務を十分に果たせないままに崩御するということへの違和感を感じていらっしゃる様子でした。
これ以外の点からも、やはり御譲位の意向であるということは確実であると思われます。
そうなると方法としては、大きく2つが叫ばれますね。
- 皇室典範の改正
- 特別法の制定
特に、皇室典範の書き換えによって、権力によって譲位が強いられるようになったり、天皇自身が譲位によって政治的影響力を恣意的に行使したりすることへの恐れが、特別法の制定という案を生んでいると思われます。
個人的な考え
私自身としては、皇室典範を改正すべきだと思います。
と言うのも、今回、日本国憲法における象徴天皇制の重大な欠陥が明らかになったのです。
それは権威としての天皇ではなく、象徴としての天皇は、何もしないのではいけないということです。
権威としての天皇であれば、他の人々からの上奏を聞いてそれに判を押すだけで政治は回るかもしれません。特に室町時代後期のいわゆる戦国時代には、天皇は権威であり、特に政治は行っていませんでした。
象徴としての天皇は、政治は行いませんが、いるだけではいけません。
丸山眞男さんの「『である』ことと『する』こと」を引用するまでもなく、象徴としての天皇は、『する』ことなのです。
この点から、年齢を重ねれば、十分に天皇を「する」ことができないというのは考えられます。
市井の人間には定年制があります。なのに天皇にはない。天皇に定年を設けろ! と言うつもりはありませんが、やはり心身の限界というものはあるでしょうし、これまで懸命に努めていらっしゃった陛下に、ささやかながらに安楽のひと時をお過ごしいただきたいと思います。
しかし特別法制定派の言い分もわからないでもないのです。この先何百年もして、今回書き換えた皇室典範が悪用されないとも限りませんから。
ですから私自身は、憲法の改正によってこの問題を克服すべきであると考えます。
憲法に次のような文章を加えてはどうでしょうか?
天皇及び天皇家と皇族の運営と存続に関する一切の権限は、天皇のみがこれを有する。
天皇は、国民の支持の無い場合において、この権限を行使することを認められない。
これであれば皇室典範改正によって起こりうる問題を、より上位にある憲法によって解決できると思います。
本来であれば、皇室典範も皇族会議によって国会に提案するような特殊な形の法律にしてはどうかと思うところですが、おそらく支持は集められないでしょう。